(1)賞与の歴史的経緯と法的解釈
 我が国には、江戸時代から大商店の主人や事業の親方が、番頭や手代、師弟などの奉公人に対して、盆・暮れなどの季節に応じて衣類(お仕着せ)や小遣い銭などを与える習慣がありました。それが時代とともにその意味合いや内容を徐々に変化させながら、今日でも、主として夏季と年末に、比較的まとまった金銭が従業員に対して支給されることが一般的になっています。これがいわゆる「賞与」です。

 労働基準法では、賞与は「定期または臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの」とされています。
 賞与は、「労務の提供があれば使用者からその対価として必ず支払われる雇用契約上の賃金」とは異なり、契約により賞与を支払わないものもあれば、一定条件のもとで支払う旨を定めるものもあり、賞与を支給するか否か、支給するとしてどのような条件のもとで支払うかは、すべて当事者間の特別の約定(就業規則など)によって決まるものと解釈されます。
 また、使用者が賞与の支払い義務を負うかどうか、また、従業員が賞与の請求権をもつかどうかという問題もあります。従業員が賞与の支払い請求権をもつのは、労働契約において賞与が支払われる旨とその支給基準が定められている場合です。賞与が単なる恩恵的な給付にすぎず、あくまでも使用者の裁量によっているということが明らかな慣行となっている場合には、従業員は法律上の請求権を認められないことになります。
 さらに、賞与の支給基準を労働協約や就業規則に定めていない場合、賞与支給の慣行があったかどうかが争われることがあります。例えば、それまでに10年以上にわたって、年2回の賞与が支給されてきたという事実があった場合には、賞与支給の労使慣行が成立していたものとみなされることになります。その結果、「黙示の合意」が成立していたものとして、あるいは「事実たる慣習」として、労働契約の内容となっていたものと判断され、就業規則などの規定において賞与の支払い義務が定められていなくても、従業員は賞与の支払い請求権をもつことになるものと考えられます。

 

(2)賞与の性格
 所定内賃金は労働者の生活を支える基本的な賃金であるために、企業業績や労働の成果を強く反映させることは困難ですが、賞与の場合はある程度可能となります。したがって、賞与は企業の人件費負担の弾力性を高める役割を果たすものといえます。
 また、賞与は残業手当などの所定外賃金の算定基礎となる賃金ではないため、企業にとっては所定外賃金コストを軽減できるものとされます。
 さらに、賞与は比較的まとまった額の一時金であることから、比較的高額な出費を賄うものとして、労働者にとっては勤続を重ねて働くことに対する大きな楽しみとなっているということがいえます。

 

(3)賞与の意義
賞与の意義について、特徴を示します。

①恩恵的賃金
 この考え方は、いわゆるワンマン経営が行なわれている企業などにおいて見受けられる程度となっており、支給条件は明確である方が企業と経営者に対する信頼を維持していく上で望ましいことは明らかです。

②生活補助的賃金
 この考え方は、盆・暮れなど、何かと出費がかさむ時期に生活を補助する目的で支給されてきたことから、生活一時金としての性格を強めてきたという経緯があり、それを全く無視することはできなくなってきています。

③慣習的賃金
 賞与は、終身雇用制や年功序列型賃金が普及する中で、臨時的性格から定期的に支給される、季節賃金として定着してきたという経緯があります。我が国の企業では、大小を問わず、ほとんどの企業で世間並みの時期に世間並みの賞与が支給されているという実情に合わせて、慣行として支給するものといえます。

④利益配分的賃金
 かつては職員と工員という身分制をとる企業における「職員優遇の方法」として使われた経緯もありました。それが大正期に、それまでの職員あるいは役付き工員に限定されていたものが、一般の工員にまで支給されるようになり、次第に普及してきたものといわれています。今日では、従業員のモラール対策など労務管理的な観点から、企業業績の向上を従業員に還元する性格を持つことも多くなっています。
 この場合には、個人の勤務成績により支給額に差をつけることによって、企業に対する忠誠心を期待したり、モチベーション対策の意味が込められることになります。

⑤功労報償的賃金
 人事考課の結果や毎月の成果などを毎月の賃金に反映させることは必ずしも容易ではなく、短期の成績評価が適切でないという場合も多いものです。このことから、一般的には半期に一度の成績査定を伴う後払い賃金として支給する形態が生まれてきました。

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