「所定内賃金」のうち、1つの賃金体系でカバーする従業員全員に支払われる賃金項目で、通常、従業員の属性や労働の内容に応じて定額制(時間給、日給、月給、日給月給、年俸などの形態)で支払われるものを基本給といいます。

(1)基本給の決定要素
 賃金体系を整備する場合、その最も重要な部分、つまり基本給をどのような要素によって決めるかとういう選択課題があります。選択肢としては、一般的に次のような要素があります。
 ① 従事する職種の市場価値(世間相場)
 ② 従事する職務(職群)の当該組織内での相対的価値
 ③ 本人のもっている職務遂行能力の程度
 ④ 学歴・年齢・勤続年数
 ⑤ 個人の業績
 ⑥ 役職位の高さ


(2)基本給の体系
 基本給の体系要素は、「属人給型」、「仕事給型」、「総合給型」という3つの「」に分類することができますが、一般的には、このうちどれか1つということではなく、複数の要素が考慮されることが多いものです。

属人給=年齢、勤続年数、学歴など属人的要素のみに対応して決定される基本給。年齢給、勤続給など
仕事給=職務内容や職務遂行能力など、仕事的要素のみに対応して決定される基本給。職務給、職能給、職種給
総合給=1つの基本給項目の中で、仕事的要素および属人的要素を総合的に勘案して決定される基本給

 また、基本給は「単一型体系」、「併存型体系」という2つの「体系」に分類することができますが、基本給項目が1つのものまたは基本給項目が2つ以上であっても、それぞれの項目が同種の「」で構成されているものを「単一型体系」といい、基本給項目が2つ以上あって、それぞれの項目が異なった種類の「」で構成されているものを「併存型体系」といいます。


(3)各種基本給とその特徴
 主な基本給の項目について、どれを選択するべきかという観点に立ってそれぞれの特徴を示します。

① 職種給
 「職種と熟練度を基準として労働市場等で形成される相場によって決まる賃金」のことを職種給といいます。
特定の職種については、その職種の具体的な内容と労働市場における需給関係、あるいは職種別の労働組合による協定賃金など、企業外で賃金相場が形成されているものがあります。
 ・職務給より仕事(職務)のくくりが大きい
 ・職務の難易度を背景としてその職種に対する労働需給を反映して賃金を決める
といった特徴から、特定の技能と経験を必要とし、原則としてその職種に専門的に携わることを条件として雇用されることが多いわけで、企業内での他の職種や年齢に影響される度合いが小さい、というところに特色があります。
 かつては、大工、左官、電話交換手など限られた職種だけでしたが、企業が即戦力を求める傾向が強くなる中で、多方面で賃金相場が形成される職種が増加しており、企業としてもこれを無視できなくなってきています。
 職種給は「労働力の対価」としての賃金といえます。

② 職務給
 「従事する職務について、職務遂行に必要とされる知識、熟練、努力、責任、作業条件など、職務の困難度と重要度を評価要素として、職務の相対的価値を評価し、その価値に応じて決められる賃金」のことを職務給といいます。企業内で行なわれる仕事(業務)を、一人分の職務に分割・再編し、類似の職務群ごとに、一定の手法によって分析と評価を行い、いくつかの職務等級に分け、そこに賃金を設定するものです。
 「企業から与えられた役割(仕事と責任の大きさ)で賃金が決まる「役割給」と呼ばれるタイプもあります。
 職務給は同一価値労働同一賃金の原則を貫こうとするもので、「労働の対価」としての賃金といえます。

参考 職務分析の主な内容

A.職務の概要
職務の範囲、特徴など
B.遂行業務
単位作業ごとの目的、性質、内容、方法、時間数など
C.遂行要件
必要とされる知識、熟練
必要な身体的・精神的努力の程度
必要とする資格
責任の程度
職務遂行に伴う危険および不快の程度

③ 職能給
 「企業が期待する遂行職務のレベルと能力要件をいくつかの階層に分け、階層ごとに従業員が保有している職務遂行能力を基準に決める賃金」のことを職能給といいます。

      ※ 能力 = 顕在能力または潜在能力(保有能力)

 「職能等級基準」を物差しとして従業員の能力を判断し、従事している職務の如何にいかかわらず、判定された職能等級別に賃金が決まるというのが職能給本来の形です。
 従業員の能力レベルを幾つかの等級に分ける資格制度(職能資格制度)をベースとすることから、職能資格給と呼ばれることもあります。 職能給は「労働力の対価」としての賃金ですが、「労働の対価」としての賃金ではありません。

④ 年齢給
 「年齢の上昇により職務遂行能力、精神的能力、あるいは種々の責任感が高まる」という能力の基礎指標とする考え方、或いは「年齢の上昇に伴い生計費が増加する」という年齢に応じて生活費への配慮をするという考え方、「賃金管理上、客観性、安心感と容易性を持たせる」といった考え方から決められる賃金のことを年齢給といいます。
 年齢給は学歴や勤続年数の要素を合わせたとしても客観的な基準となりうる、として広く導入されてきました。

⑤ 勤続給
 「企業内で中長期的な人材の育成・活用戦略に対応して、長期にわたる勤続を促す」、「勤続による功労に報いる」、「勤続年数に応じて知識が増加し、職務に習熟し、職務遂行能力が向上することに対する能力加給的な役割を持たせる」といった考え方から決められる賃金のことを勤続給といいます。
 勤続給は賃金体系の中で他の基本給項目と並立させるもので、勤続給単独で基本給を構成することはありません。

⑥ 経験給
 「特定の職種または類似職種における経験年数を基準として決められる賃金」のことを経験給といいます。「勤続給の意義に、他の企業や社会における経験年数を加味したい」場合に導入されることがあります。
 経験給は、賃金体系の中で他の基本給項目と並立させるもので、経験給単独で基本給を構成することはありません。
 経験差による能力レベルを直接判定できる場合、技術革新などによって熟練価値が低下するような場合は不要とされます。経験の長さを重視するために、経験年数を賃金に反映させることが適当と判断される場合に活用されます。

⑦ 業績給(成果給)
 企業が期待する業績(仕事の成果)レベルを困難度、責任の重さなどによりいくつかの階層に分けて設定し、その実績に応じて決められる賃金」のことを業績給(成果給)といいます。
 「従業員を雇用して生産性をあげても企業業績が伸びないような状況に至った場合、従業員に支払っている賃金が企業業績の実情に即していない」、「賃金は従業員個人があげた業績や成果に応じて支払いを増減できれば経営は安定するのではないか」という考えから登場したのが業績給(成果給)です。
 労働の対価として金銭を支払う賃金形態には二つの種類があり、一つは「定額給」、もう一つは「出来高給」です。出来高給はまさに本人の「業績・成果」に基づくもので、企業にとっても働く側にとっても最も合理的な制度といわれることがあります。
 しかし、賃金は雇用契約や就労に先立って示さなければならない労働条件の一つですから、「出来高給」のような変動的な項目単独では基本給を構成できせん。導入する場合は、生活保障部分を明確に確保したうえで成果を促すような「刺激給」として導入するケースがほとんどです。

⑧ 総合決定給
 「年齢、勤続、学歴、経験、職務、能力、行動などのうち、複数の要素を総合的に勘案して決められる賃金」のことを総合決定給といいます。
 事業規模が小さく、従業員数も少ない企業では、以上に示した基本給項目のどれか一つに絞って基本給とすることが難しいとするところが少なくありません。担当してほしい仕事は多岐にわたることから職務を限定的に定めることは難しく、従業員の能力も性格も多様性が高いといった事情によるのかもしれません。
 
「総合的に勘案」とはいうものの、決定基準が多くなればなるほど運用方法はあいまいにならざるを得ない面があります。
 一方、近年の産業構造の変化によって労働力市場の流動化が急速に進んでいます。「平成不況」を通しての企業間移動が進み、その結果、新規開業の事業場でも既存の企業でも、即戦力となる人材の中途採用に頼ることが多くなりました。
 その際に、総合決定給の基本給では採用に支障をきたすようになってきたことから、企業にとってはより合理的で働く側により魅力を感じてもらえるような基本給体系へ転換することが経営の一つの大きな課題として浮上してきています。

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